ピアサポートのメリットの考察を考える



令和3年4月から計画相談と就労継続支援B型の新しい類型にピアサポート加算がついて約1年たとうとしている。



この機会にピアサポートのメリットについて俺の私見を記事にしたい。





自己紹介



詳しい自己紹介は自己紹介の記事を参照してほしいが、この記事を書く俺がピアサポートのメリットについて語る資格があるということを語りたい。俺も統合失調症の当事者で、精神保健福祉士を取得して相談支援専門員として働いている。ピササポート専門員でもあり、ピアと専門職の二つの顔の使い分けについて日々葛藤しながら働いている。詳しい自己紹介は自己紹介の記事を参照してほしい。



詳しい自己紹介はこちら。









ピササポートの語源



そもそもピアサポートとは、英語のpeerで、「仲間」とか「対等」等の意味がある。また、サポートは英語のsupportで援助・支援を意味する。つまり仲間から受けるサポートを総合してピササポートと使っている。



このピササポートは、もともとはがん患者やアルコールや薬物のアディクションと言われる依存症が歴史が古い。



精神障害の分野でピアサポートが始まったのはアメリカのメディソン州で、ピアサポートスペシャリストという資格がアメリカの医療保険であるメディケイトに反映されたことでアメリカでの広がりを見せていく。







そこを日本の厚生労働省や障害者福祉に関わる人が見学に行ったことで、日本で研究や研修を考える「ピアサポート専門員」に繋がっていった。



そこで大事にしているのがリカバリーという言葉だが、もともとは、「元気」とか「変化」とかのニュアンスで使われるが、精神医療福祉の日本の当事者復権運動の意味合いが含まれていることを忘れてはならないと思うんだ。



つまりリカバリーは当事者初の言葉で、当事者が自分の人生を取り戻す過程のことをリカバリーという言葉になっているんだ。





パーソナル(個人的)リカバリーと社会的リカバリー



リカバリーも大きく分けるといくつかあり、詳しく話すとかなり長くなるので割愛するが、



1,個人的(パーソナル)リカバリー



2、社会的リカバリー



の二つに分けられる。



例えば社会的リカバリーは幻聴や幻覚という陽性症状が軽減されることや、外出出来たり働けるといった社会とのつながりで語られる。



一方パーソナルリカバリーは、夢や希望があることや、自己選択や自己実現ができているという自分で自分の人生の舵をとっているという感覚に近い。



このあたりのことは東京大学東京大学先端科学技術研究所の熊谷晋一郎の研究が参考になる為、参照してほしい。



特に誤解されやすいのが、依存と自立の関係が参考になる。一般の感覚で言うと、依存と自立は対義語として語られることが多いが、そもそも自立とは依存先を増やすことと熊谷晋一朗先生は語っている。満たされない依存は問題になるが、満たされる依存(例えば夫婦間の依存)は問題ないわけだ。





当事者活動の歴史



熊谷晋一朗先生は当事者活動を研究しているんだけど、当事者活動は、身体障害者からの流れと、アルコールや薬物の依存症治療の流れが大きく分けて二つある。



当事者活動の歴史はこれまたそれだけで長い記事になるので割愛するが、そのどちらからもはじかれた周緑化という現象で、自分の病気に名前を付けるという当事者研究という活動が始まっている。これについては別に記事を書く予定なので参考にして欲しい。



詳しくは東京大学のHPを見てほしい。



上記の流れを受けたピアサポートのメリットについて







上記の話を受けて、ピアサポートのメリットについて私見を書きたい。最近の精神医療福祉の目的地が「リカバリー」となっている。しかし、リカバリーにはいくつか分類があるという話を知っている人は少ない気がする。社会的リカバリーは、医療的な症状の改善や就労など、既存の福祉サービスでも叶えられるかもしれない。しかし、もう一つの個人的(パーソナル)リカバリーは、障害当事者が自分の人生の舵を自分でとっていることや夢や希望があるというそれこそ個人的な感じ方に関係してくる。ここについては、同じ精神疾患を経験した障害当事者だからアプローチできる概念だと思う。「あの人が頑張っているから俺も頑張る」と感じた経験は誰にでもあると思うんだけど、同じ言葉をかけるとしても、何を言われるかよりも、誰に言われるかが大事だと思うのが俺の考えだ。つまり信頼関係がある人から言われたから頑張ってみようと思った経験はあなたにもあると思う。そんな現象がピアサポートのメリットだと俺は考える。つまりピアから言われたことで、ピアのリカバリーに繋がるという希望の感覚の伝搬といったところ。



ただ注意してほしいのは、ピアサポーターは自分の病気の経験を支援の中で話すことが多いと思うが、その経験を話すときも、その当事者にとって良い効果があるという判断があるときに、効果的な話し方をする必要がある。リカバリーストーリを話すときは、よく「経験を差し出す」という言い方をするのはそのような意味だ。



この「経験の差し出し方」は職人技のようなもので、障害当事者が支援の経験を積みながら身につけること。



俺は相談支援専門員として働いて、割と現在の職場になってからは当事者を隠さないが、経験を話すことはそう多くない。それは特に相談支援専門員という立場もあると思う。専門職としての役割を求められる場面が多いので、関係機関との兼ね合いも含めて、かなり慎重に当事者性を出すようにしている。



相談支援専門員とピアサポートの二足の草鞋については、また別の記事で書きたいので気になった方はぜひサイトをお気に入りに追加してくれると泣いて喜ぶ。



こんな記事を書こうと思ったのは、実は、l第64回日本病院・地域精神医学会岡山大会で2月19日の12:50分から「お仕着せの支援なんかいらない~相談支援を考える~」というシンポジウムで話すことになったので、ピアサポートと相談支援について整理したいというきっかけで書き始めた。気になる方はぜひ学会を聴いてみてほしい。



よかったら2月19日に第64回日本病院・地域精神医学会岡山大会のzoom学会で会いましょう。ちなみに申し込みが今日までに延期されたというのは内緒のお話。