精神障害領域のピアサポートについて

最初の投稿は精神障害領域のピアサポートについて



最初の記事何を書こうかと悩んで更新が遅れていたが、ピアスタッフが最初に各記事が専門職のことばかりでは面白くない。



そこでピアスタッフとして働く精神保健福祉士の私が、日本のピアサポートの現状を、知ってる限りでまとめてみたので参考にしてほしい。



そもそもピアサポートとは



元々ピアサポートのピアとは、仲間という意味の(peer)という言葉が元になっている。仲間とか同輩とかいう意味だ。



ピアサポート(peer support)とは、こうした同じような共通項と対等性をもつ人同士(ピア)の支え合いを表す言葉なんだ。





ピアカウンセリングやピアサポーター、ピアスタッフなどいろいろな意味でつかわれている。





精神領域のピアサポーターは、久留米にある地域生活支援センターピアくるめでユーザー職員という名前で当事者を雇用したのが一番最初だ。



「ピアサポート」という言葉がさかんに使われはじめるようになったのは、日本では、1990年代以降で、言葉自体としての広まりはごく最近なんだけど、「ピアサポート」の言葉が普及する以前から、「セルフヘルプ」などの言葉として、受け継がれてきた部分もあるんだ。



ここでは言葉を統一する為に、「ピササポート」という言葉に統一して書いていく。





アメリカでのピアサポート



精神保健福祉士の先進国である北米では、ピアサポートの起源は1923年の精神衛生運動にあると言われている。



その後 1963 年にいわゆる「ケネディ教書」で「精神保健・医療・福祉サービスを受ける権利をもった消費者」として示され、精神障害者を「コンシューマー」と呼ぶようになった。



脱施設化がすすめられ、そのころからコンシューマーの精神保健福祉サービスを提供する活動は始まったんだ。いまだに長期入院が横行している日本とはエライ違いだ。



1990 年代に入ると専門職主導の精神保健福祉システムを批判することから始まったリカバリーの概念が広まっていく。今でこそリカバリーという言葉は市民権を得た気がするけど、始まりは専門職を批判することから始まったことを忘れてはいけないと思うんだ。



2000 年代になると「認定スペシャリスト」の制度化が進み現在では「ピアスペシャリスト(peer specialist)」と、呼ばれるようになる。日本と大きく違うのは、医療保険のメディケイドの中に組み込まれいていることが大きい。制度として確立されているんだ。



もちろんアメリカは州によって制度が大きく違うから、研修自体は州によって異なる。



以下調べたものを書いておく。



ジョージアモデル; 2週間40時間.2年に一度の継続受
講.560人受講修了/391人認定(2006).
◎METAモデル;2~5週間70時間.ピアスーパービジョンの実施.1182人修了(2006)
◎DBSAモデル;PPRCとの共同開発. 5~6日間で30時間.その後のSV177人修了(2006)
◎CAPモデル;カンザス大学と提携.半年間週一日程度大学へ通いコマをとるように受講。実習もあり。





日本でのピアサポートの始まり



日本においては、海外のピアサポートの実践としてクラブハウスモデル、ザ・ヴレッジや米国のマディソン市ソ(SOAR)におけるコンシューマーとの協働の実践等が、かの有名な野中猛先生によって報告され、リカバリーの概念と共に広がっていった。



平成23年からは南港愛隣会東京事務所の武田牧子氏や精神保健福祉士の資格を作った門屋充郎氏が中心となってピアサポートの資格を作ろうと活動が始まる。



実は俺はこの時の委員になっていて、ピアサポートの資格の名前を一緒に考えてた。



そこで決まった名前が「ピアサポート専門員」だ。





ピアサポート専門員



研修は基礎研修が2日、専門研修が2日で、終了証が発行される。その後2日間のフォローアップ研修を受ければ申請すれば認定証が発行される。専門職も受けることができる研修だけど、認定証が発行されるのはピアのみ。



平成25年度から全国で研修が始まり、最初は東京、札幌、仙台で、平成26年度は鹿児島と兵庫で研修を行った。平成27年度は横浜と福岡で研修を行い、東京でフォローアップ研修を開催した。



この頃は平日は週5で働き、週末は研修で日本各地を出張して月の休みがほとんどない日々を過ごしていたのはいい思い出だ。



一から研修を考えるのは思っている以上に大変で、土日に研修の内容を考える為に東京に頻繁に行き、皆であーでもないこーでもないと言って議論して研修の内容を決めていった。



詳しい研修の内容は、ピアサポート専門員の公式HPがあるのでぜひ見てみてほしい。



今では「一般社団法人日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構」が設立され、毎年精神障がいピアサポート専門員養成が実施されている。



ピアサポート専門員については、詳しくは別の記事を上げるので、興味があったら見てほしい。



ピアスタッフ協会



ピアサポート専門員とは別に、2012(平成 24)年に相川章子(聖学院大学)による研究プロジェクトのもと「第 1 回ピアスタッフの集い」が開催され、2014(平成 26)年に「日本ピアスタッフ協会」が設立されている。現在「ピアスタッフの集い」も毎年開催され 、2020年は新型コロナウイルスの影響で、初のオンラインで開催された。



実は上記のピアサポート専門員とピアスタッフ協会の委員は同じ人もいて、同じピアスタッフやピアサポートに二つ団体があるよりも統一したほうが良いという意見があり、統一されるという話し合いにも参加したが、結局は別々に活動することになったんだ。



こちらもHPがあるので、気になる人はぜひ見てみてほしい。



日本ピアスタッフ協会



その頃の仲間の写真がブログのトップにもなっているこの写真。







そして障害者ピアサポート研修事業と加算へ向けて



2020年からはピアサポート専門員研修をもとにして厚生労働省科学研究を経て、地域生活支援事業の中に「障害者ピアサポート研修事業」が位置づけられ、国と県が予算をつけて公的に研修を行う制度が作られた。しかし、新型コロナウイルスの影響で、全国で一度も研修が行われていない。



そして2021年度の報酬改定で、計画相談や就労継続支援B型の中に、ピアサポート加算が取り入れられることが、現在厚生労働省の報酬改定チームの中で議論されている。



厚生労働省のリンクを勝手に張るのはまずい気がするので、ぜひ「厚生労働省、障害福祉、報酬改定」でグーグル先生に聞いてみてほしい。





私が想うこと ピアサポートの意義について



ピアでもあり、精神保健福祉士でもある俺が想うピアサポートの意義。。。





これは実は自分の中でも言語化できていない。



働くピアによって持ち味は違い、ピアだから基盤となるのは病気の経験とそこからのリカバリーであることは間違いないんだけど、それがあればピアスタッフになれるのかというと疑問が残る。



普段俺はわざわざピアですよとアピールすることもない。ただ、この利用者さんのこの悩みには、自分の経験を話すと、その利用者さんにとって何かのきっかけになるかもしれないと判断すれば、自分の経験を話すときもある。よくピアサポートの意義を話すときに、「経験を差し出す」という言い方をするが、そんな感じだ。



そこには、ピアとしての経験を話すことが有用であると判断する勘、職人技の判断がある気がする。



ロールモデルとして思ってもらえるタイミングや状態を、経験から判断しているんだろうけど、それについては言語化したらまた記事に上げようと思う。



長くなったからここまでにするけど、独りよがりなピアや、独善的な専門職のどちらにもならないように気を付けながら、日々働いてきたいと思う今日この頃です。